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マンボウの食性シフト

 マンボウは、クラゲやクシクラゲ、サルパなどゼラチン質の動物プランクトンを主食にしているとされるが、採餌生態は詳しくわかっていなかった。本研究では、消化管内容物や安定同位体比を用いた食性解析と合わせて、データロガーを用いた行動追跡を行うことでマンボウの採餌生態の解明を行った。

 全長29cmから250cmまで様々な体サイズのマンボウを解剖し、消化管内容物を調べたところ、大型個体からは従来餌とされてきたクラゲ類が検出されたが、小型個体からは甲殻類や貝殻、砂利など底生採餌を示唆するものが検出された(図1)。また、安定同位体比分析では、体サイズの増加に伴って窒素・炭素同位体比ともに高くなるという結果が得られた(図2)。

 行動追跡では、全長49cmから164cmまで様々な体サイズのマンボウにデータロガーを装着する放流実験を夏と秋に行ったところ、体サイズや季節によって行動に違いが見られた。小型個体では海面付近以外の一定深度に留まるような行動が見られ、この間、海底の様子が記録されていた。大型個体の行動は夏と秋で異なっており、季節躍層の発達する夏は主に海面付近に滞在して時折深度100mを越える深い潜水を行っていたが、混合層が発達する秋は主に混合層中に滞在していた(図3)。

 結果を合わせると、小型個体は甲殻類などの底生生物を餌とし、大型個体はクラゲ類などのプランクトン性の餌を利用するという成長による食性の変化を示唆する結果となった。また、マンボウの滞在深度は季節による海洋構造の違いによるもので、水温が鉛直移動の要因になっていることが考えられる。

図1 小型のマンボウの消化管から見つかった甲殻類たち

図2 マンボウ(○)の炭素・窒素安定同位体比は体サイズが大きくなるほど同位体比は高くなっていた。各種クラゲ類(□)は小型のマンボウより高い値を示した。

図3 夏のマンボウと秋のマンボウの行動には違いが見られ、季節躍層の発達する夏は主に海面付近に滞在して時折深度100mを越える深い潜水を行っていたが、混合層が発達する秋は主に混合層中に滞在していた。

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